棲む蝶々~remember me~Ⅰ

2/4
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
少しだけ記憶の引き出しを開けて、イメージを膨らませてみれば、目の前にランウェイが現れる。 別に大きな会場じゃなくったっていい。 例えば、唯一大切に向き合っている、イングリッシュ風をイメージしてみた本当に目の前に広がるガーデンでもいい。 そう、もっと色とりどりの花を咲き乱して、もっともっと華やかに。 ああ、私も負けていられない。 手に持ったグラスをテーブルに置き、着ていたロングカーディガンを脱ぎ、その下のロンTもショーツも脱ぎ捨てて、 裸になって、もっと深くイメージ。 人気ブランドの新作を着て、メイクもヘアアレンジもバッチリして、音楽と共に繰り出せ。 BGMにも負けない、歓声が聞こえる。 薔薇の蔦が絡まるアーチをくぐって、ポーズを決める。 ほら、自慢の美脚を―… そう思った時、ハッ…と集中が途切れて、全てのイメージは消えた。 庭の中心にポツンと一糸纏わぬ姿で立ち尽くす私。 「ふふっ、ははっ……」 そんな風に笑いながら、小石の上も歩き、屋根付きの木製ブランコに座る。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!