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少しだけ記憶の引き出しを開けて、イメージを膨らませてみれば、目の前にランウェイが現れる。
別に大きな会場じゃなくったっていい。
例えば、唯一大切に向き合っている、イングリッシュ風をイメージしてみた本当に目の前に広がるガーデンでもいい。
そう、もっと色とりどりの花を咲き乱して、もっともっと華やかに。
ああ、私も負けていられない。
手に持ったグラスをテーブルに置き、着ていたロングカーディガンを脱ぎ、その下のロンTもショーツも脱ぎ捨てて、
裸になって、もっと深くイメージ。
人気ブランドの新作を着て、メイクもヘアアレンジもバッチリして、音楽と共に繰り出せ。
BGMにも負けない、歓声が聞こえる。
薔薇の蔦が絡まるアーチをくぐって、ポーズを決める。
ほら、自慢の美脚を―…
そう思った時、ハッ…と集中が途切れて、全てのイメージは消えた。
庭の中心にポツンと一糸纏わぬ姿で立ち尽くす私。
「ふふっ、ははっ……」
そんな風に笑いながら、小石の上も歩き、屋根付きの木製ブランコに座る。
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