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埃、 砂、 緑に土、 庭に咲き誇る花の匂いまで―… 風は沢山のものを連れて、この部屋に吹き込んでくる。 その勢いに、つい瞳を閉じてしまう。 ゆっくりとおそるおそる閉じた瞳を開けた瞬間、信じられない光景が飛び込んできた。 男、 自称アゲハチョウ男の背中で何かがキラキラ光り輝いている。 よく瞳をこらして確認すると、 「―…っ!?」 それは羽根だった。 薄っすらと黄色や黒色の筋や斑点が見えて、煌びやかに瞬いている。 「嘘……でしょ……」 私の口から、やっと出て来た言葉は震えてる。 「見て、本当だよ。僕の羽根だよ」 「こんなこと……って……」 信じられない。 目の前で起こっている出来事を否定するかのように首を左右に振る。 「嘘じゃない。本当に僕の実体は揚羽蝶なんだ」 「今から……また蝶に戻る……の?」 「わからない」 「わからない、って―…!」 「だから華ちゃん、この両腕が君を抱きしめられる姿でいる間は―…」 ぎゅっと私を抱きしめる男の手は、微かに、ほんの微かに震えていた。
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