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胸が苦しい。
甘く切ない感情が心の奥底から溢れる。
「華ちゃん……」
どうして、男が私の名前を呼ぶ声は、懐かしく響くのだろう。
ずっとそばで囁かれていたみたい。
羽根の瞬きと共に、”華ちゃん”と―…
そう思うと、スッと苛立ちや怒りといった醜い感情が引いていく。
代わりに溢れてくるのは、優しく柔らかい〝何か”。
気付けば私は自然と男の身体に手をまわしていた。
もっとよく男の顔を見つめれば、そこにある薔薇色の唇にも惹かれそう。
それに、この謎ばかりの男をこのまま何処かへやりたくない。
そんな気持ちになったと同時に、
風は止み、男の羽根も消えた。
人間の姿のまま、だ。
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