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前へ、後ろへ漕ぎながら、
「なぁに、やってんだって―…」
また、そんな独り言をポツリ。
ぶーらんぶーらん漕いでいると、
「―…」
ふと、大きく張った蜘蛛の巣に捕まってしまったアゲハチョウが目に留まった。
捕まったばかりなのか、まだ動いている。
このまま放っておけば餌食に―…
蜘蛛だって生きてるんだからさ。
そう思ったけれども、
私はそっと、なるべく傷めないように蝶を持ち、
「ほら、お逃げ」
しつこい蜘蛛の巣から何とか救出した。
無事に羽ばたいていくアゲハチョウ―…
やけに美しく見えて、
なぜか涙が頬を伝った。
そんな私にヒューっと風が当たる。
「さむ……」
当たり前だ。裸なんだもん。
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