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「はあ、お腹いっぱい。ご馳走様。」
そう言うと静かになった。私は、誰かが食べ物を与えた事を大丈夫かと心配したが、内心ほっとして眠りについた。
次の日の朝、隣のベッドから苦しそうな息遣いが聞こえた。どうしたんだろう?佐藤さん、具合が悪いのだろうか?私が心配している側から、おええとえづいて、床に吐しゃ物が飛散する音が聞こえた。
これは大変だ。私は急いで、自分のベッドのナースコールを押した。
「どうされましたあ?」
スピーカーから看護士の声。
「さ、佐藤さんが!具合が悪そうなんです!すぐに来てください!」
「はい、わかりましたー。」
私は、すぐに佐藤さんの病室を覗いた。
「大丈夫ですか?」
吐しゃ物のすえたにおいに、こちらまで吐き気がした。
床には吐しゃ物が飛散していて、私はもろにそれを見てしまった。
吐しゃ物の中に、何か違和感を感じた。
緑色の吐しゃ物。それは、見たことのある形だった。
「か、カエル?」
嘘でしょう?なんで、吐しゃ物の中にカエルが。しかも、胃液で少し溶けている。
私は思わず口を塞いだ。
看護士がかけつけて、吐しゃ物を始末して、もう一人は佐藤さんの意識確認をした。
「佐藤さん、佐藤さん、大丈夫?私がわかる?」
ぐったりとした佐藤さんは、薄目を開けた。
「わかるよー。看護婦さーん。」
良かった。意識はあるみたいだ。
佐藤さんはそのまま、検査室へと運ばれた。
私は、自分が見た物をにわかに信じられなかった。
きっと気のせいよ。佐藤さんが食べた何かがカエルに見えただけだわ。
でも、緑色の体には、小さな目が。
自分のすぐ足元で見たのだ。
いやいや、やはりあり得ない。
そう思いつつも、夕べ佐藤さんのベッドを訪れた誰かが、佐藤さんにカエルを与える姿を思い浮かべてしまうのだ。
佐藤さんは2時間ほどで、病室に戻ってきた。
「かあんごふさあああん。ご飯まだぁ?」
あれだけ吐しゃしておきながら、ご飯を食べるのか。大丈夫なんだろうか?
私は、佐藤さんに何も異常が無いことに驚き、また、不謹慎ながら、少しがっかりしていた。
最低だと思われても、本当にこちらが参ってしまう。とっくに点滴が外れても良さそうなのに、私はまだ点滴でつながれている。これも全て佐藤さんの所為のような気分にさえなる。
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