12人が本棚に入れています
本棚に追加
「お食事ですよー。」
起床してしばらくすると、朝食が運ばれてきた。
あら、今日はお蕎麦なのね。
私は、久しぶりのまともな食事に喜んだ。
病院食というのは実に味気ないので、たまにはこういう物が無性に食べたいのだ。
カーテンの陰から、看護士が手だけ出してテーブルに食事を置く。
「ここ、置いときますねー。」
そう言うと、そそくさと去って行った。忙しいのだろう。
「いただきます。」
私は手を合わせると、まずはお蕎麦から箸ですくって口に運ぶ。
「おいしい、おいしい。」
食事をしていると、カーテンが開いて、久しぶりに主人が顔を出した。
「どうだ?調子は。」
そう言って私を見たとたんに、表情を強張らせた。
「お前!何を食べてるんだ!」
そう言うと、私の手から乱暴にお蕎麦のお椀を取り上げた。
「え?何って?お蕎麦だけど?」
「これのどこが蕎麦だ!」
私にお椀を向けると、その中には無数のミミズがのたくっていた。
「いやあああああ!」
きぃきぃきぃきぃ。
ガラガラガラガラ。
最初のコメントを投稿しよう!