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四禮澪時、彼は現在所属する団体の“戎会”へと足を運んでいた。
数日前に召集の手紙が来て、参加せざるを得ないのだ。
数字の付く姓の者達は、権力を貰い、それを行使出来る代わりに会合は強制出席である。
「おや、澪時君早いね」
と、とある寺の中へ入って声が掛かった。
その声の主をチラリと視線を向けてから澪時は溜息を落とす。
「…あぁ、早く終わらせてさっさと帰りたいんでね」
大きな寺の横にある大きな松の木の下に聳える大きな岩、人が座って良い物ではないのだが
彼はそんな事お構いなしのように座っていた岩から、飛び降りると澪時の傍に
タタタッと駆け寄り、何かを見るように澪時を上から下までじっくりと見てニヤリと笑う。
「へぇ、それより澪時君は、随分力を付けたようだね?」
「は?」
「凄く力が漲ってる…溢れるんじゃないの?それ」
そう言いだして、クスッと笑った幼い少年。
齢11歳の、本当に少年と言われてもおかしくない年齢で、あどけなさがまだ見て取れる。
髪は赤く、その髪の名の通り彼の名は…
「暫く見ないうちに、背伸びたんじゃねぇの?一之瀬紅夜(いちのせこうや)」
四禮がその正体に気付かせない為に話を逸らし、ポンと小さな少年の髪をクシャリと
掻き混ぜる。
「ウソ!?やった~伸びたんだ~!ってか、澪時君フルネームは止めてよ~」
と、ニッコリ笑うとスタッと四禮の横に並んで歩き出した。
目の前の大きく古めかしい木々が形成しているその寺を見て澪時は再び溜息を吐く。
「で、澪時君のその力は、随分上質な気だよね?誰から貰ったの?」
頭の後ろで指先を組み支え、四禮を見上げればその問いに一瞬眉間に皺を作った。
そう、一之瀬の力は、人の力の質等を見分けるのに長けている。
前まで散々力が足りないとバカにされていたが、一花の力を断続的に印を通して受けてる身で
それを知られる訳にはいかないのだから、四禮にしてみればやりずらい事この上ない人ではある
だが、今こうなってしまえばどうにか乗り切るしかない。
「あ?誰って…昨日の夜から朝まで一緒に居た女だが?」
気怠そうに首をコキッと一つ曲げて答える四禮の言葉に、紅夜がポンと頬を赤らめる。
「うわぁ~破廉恥だぁ~僕はまだ出来ないしなぁ~」
「出来ないじゃ無くて、相手して貰えないんだろ?」
ニッと笑って見せればぷくっと頬を膨らませ、スケベ男と言い残し消えて行った。
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