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一花は家に到着すると、柊司を見送って自宅へと戻るとボスンと
カバンをベットに投げ捨て、自分もドサリとベットに身体を投げ出した。
「はぁ~なんか疲れたぁ~…」
四禮が居ないと言うので解放感を感じていたのだが、解放感とは裏腹に
恐怖を募らせるだけとなってしまった。
あの音は前にも何度か聞いているし、四禮が居れば何がどうなったか説明をくれる。
だが今回はそれがないだけで急に不安が襲って来たのだ。
見えない訳ではないから、悪いモノが居れば視界には入るだろうが、入ったとしても
対処方法が四禮から預かっているお札だけしかない。
近くに彼が居る訳でも無い不安が、一花の心を蝕んでいた。
と、不意に携帯が鳴った。
不安心が強くなっている今の一花には普通の音量なのに、大音量かのように驚いて
携帯の着信先を視線で追ってみる。
「…知らない番号だ」
見た事がない番号だったが、取りあえず最近知り合った人間が多いため
一花は出る事に決めて携帯を耳に当てた。
「も、もしもし?」
「あ~…なんかあっただろ?」
その声は、連絡してこれないと言われていた四禮の声。
一花はビクッと背中を震わせた。
今まで渦巻いて居た不安心が一気に声に攫われ、一花の安堵の溜息が落ちる。
「電話できないんじゃ?」
「本来は出来ねぇよ…だからここの人間以外の奴に借りて掛けてる」
だから知らない電話番号だったのかと、一花は納得した。
「で、状況は?」
「…実は」
自分の体験した事しか伝えられないので、それを伝えると四禮は解ったと言い
四禮の家に行くように指示された。
「へ?なんで?」
「恐らく、狙われてる可能性があるからな、アンタの家よりウチの方が安全だからだ。
鍵はポストの中の天井に付いて居るからソレを剥がして使え!あと単位もあるだろうが、
オレが帰るまで一歩も出ない様にして置け。食料の買い溜め忘れんなよ」
一気に捲し立てる様に告げて来る事を頭の中で整理しながら、一花も返事を返す。
「わ、解った」
そこで電話が切れた。
四禮は、そんなに長電話出来ないし、抜けて来ているからこれから所長と話して、帰るとの事だった。
一花は言われた通り、スーパーに立ち寄り食料品を買い込み三日分の食料を用意すると、四禮の家を目指す。
一花の家から然程離れた場所では無かったため、買い物も含め所要時間は三十分程で四禮の家へと到着した。
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