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一花が通う大学の近くに、大きな公園がある。 その公園は、かなりの規模で中に池もあれば、子供が遊べる遊具付き公園がその園内に三か所はあるほどの規模。 その中に、ひっそりと神社があり、そこの神社は神主さんに奉られている。 その近くの池では鯉が悠々と泳ぎ、ボートが貸し出される程の大きさ。 テニスコートも二面あり、プールも野外設置ではあるが付いて居る。 一歩奥へ入れば、遠足が出来そうな山もあり、その近くに学校がある為一花は時折その公園でゆっくりと現実逃避などをする事がある。 その日も、そんな日だった。 日々、事務所の仕事と四禮の事で時間を費やしていたが、今回四禮は暫く戎会と言う会合に出なければならないと言う事で、三日の野放しが決定されたのだ。 恐らく大丈夫かと思われるが一花の力の暴走がいつ起こるかも知れないので、念の為毎日村雲事務所へと足は運ばなければならないが。 ベンチが池のほとりに数点並び、カップルや老人、話しをしたり踊ったりしている子も居る中で一花はその一つのベンチへと腰を掛けた。 隣は女子高校生だろう、制服が近隣の高校と同じなので恐らくその高校生が三人で遊びに来て、疲れを癒していると言った所か。 ボーっと眺めていると、鯉が餌をくれと顔を出し、老夫婦がそれに答える様に餌を投げ入れていた。 「はぁ、長閑だぁ~」 数日前までは、妹に憑いた悪霊をどうにかしなければとバタバタしていた一花は、妹の双葉の退院も終わり、引きずり回す四禮も居ない。 これぞ、自由と両手を伸ばして身体をグンと伸ばした折、隣から聞こえた声。 「でね、神隠しだったみたいよ」 「うっそ~マジで?なっちゃん神隠しにあったの?」 「両親が探してるって、うちにも連絡が来たもん」 最近、この近隣で起こっている“神隠し”の話題だと、すぐに解り、一花は耳を傾けた。 数キロ先にある中学生が二人、高校生が三人、既に五人の犠牲者が出ている。 神隠しが本当なのか、何かの事件に巻き込まれているのか… その判断は解らなかったが、事務所にも依頼が来て、現在村雲自身が動いているのだ。 恐らく、村雲が動くのは横内いわく“お偉いさんの依頼”なのだろうと言う事だった。
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