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シンとしている室内で、やる事を無くした一花がボケっと過ごしていると
ピンポンと、鳴り響くチャイムの音にビクッと身体を跳ねさせた。
「な、なに…?宅配?それとも、
四禮君の知り合いとかだったら出ちゃったらまずいよね?」
だが、電気も付いて居ている事は確実な今、出ないのも何か申し訳ないと
恐る恐るインターホンを取る。
「はい?」
“どちら様ですか?”と、声を発する前にインターホンの向こうから声が響いた。
『一花、居るのは解ってるぞ!大人しく出て来な!』
その声に一瞬驚いた一花が、聞き慣れている声にホッと胸を撫で下ろした。
「い、今出るね?」
鍵を開けると、ニッコリと笑った真中と横沢が居てどうしたのと問い掛けると、
二人はなだれ込むように玄関へと入って来た。
「うわっ、澪時君の部屋なんもない!」
真中の言葉が部屋に響く。
自分も確かに第一印象はそれだったと一花も二人が入って行く姿に苦笑いを零した。
「そ、それよりどうしてここに?」
一花が首を傾げると、丁度部屋の真ん中に立った真中がニッコリと笑った。
「なんかさ、横沢から聞いたんだけどさ~?一花が男の家に転がり込んで暫く学校に来ない
とか言いだしたらしいって聞いて、ちょーっと詳細話して貰おうかとね」
クスクスと笑ってフローリングの中央に敷かれていたラグの上に二人が順に腰を下ろした。
数日前までは無かったのだが、どうやら新しく買ったのか、前来た日は洗濯でもしていたのだろうか。
二人が座り込んだその場所に一花も座ると事の次第を話し始めた。
数日前に通りかかった場所が、今有名な神隠しの場所の近くでもしかしたら自分は狙われているかもしれない事。
それを多分知ったであろう四禮が、電話で自分の家に居るよりその家に居る方が良いと言われ
一花は指示に従っただけだと言う。
「そっかぁ~狙われるって澪時君言ってたもんね?」
「ん、多分それなんだと思う」
「ったく、澪時も俺らに連絡すりゃぁ手伝ったのによぉ」
苦笑いして頭を掻く横沢に一花もゴメンねと返す。
正式にこの依頼を受けて居る訳でも無く四禮の代わりに見てくれと
連れて行かれた事が発端なだけに、あの村雲の居る事務所に一人で頼りに行くのも正直怖かった。
目の前で監禁すると断言までされているのもあるが、村雲の真意をまだ聞いては居なかったのだ。
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