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お待たせしました。
と、戻って来た二人が長椅子へと座ると、神成が背筋を伸ばす。
「改めて…言って置きますが、一花ちゃんは澪時の」
「嫁だろ?」
広田のその言葉に、そして話をブチ切られた事にポカンとする柊司と村雲。
それに気付いて苦笑いを零す神成がトントンと肘で広田を突いた。
「広田さん、流石に人の話てる最中は黙りましょう」
「あぁ、すまん」
「嫁とは…どうしてそう思いましたか?」
案外その話に乗って来たのは、村雲だった。
「アイツの目だよ」
「目?ですか…」
「ありゃ、骨抜きだろ?」
「…そうなんですか?」
「オレの感が言ってる、澪時は特別な感情をあの子に持ってるような…気がするんだが」
「…気のせいで納めないと、一花さんに殴られますよ?」
クスクスと笑った神成が告げれば、そうか?とキョトンとしている広田に、村雲がコホンと一つ咳を落とした。
「あの二人は恋愛関係にはないですよ…」
「へぇ、まぁ俺は感だからな、それが正しくなるかは時間が教えてくれるだろうよ…それより、あの子を人攫いの様にあそこへ連れてったのは俺だ、澪時がしばらく帰って来ないって言うから、彼女が現場を見れば何か手がかりが得られるかと思ってな…申し訳なかった」
大きな男が頭を下げるとどうしてこんなに…クマに見えるのか。
「ええ、澪時には伝えますので、怒られる覚悟はして置いた方が良いですね。彼女は嫁では無くても、澪時の特別な助手なんで」
「あぁ、覚悟しておくよ。
それより村雲さんよ、この事務所で動いてるって事で良いのか?」
その問い掛けに、所長はズズッとお茶を啜りながら、何がですか?と返した。
「あの神隠しは、怪異の仕業って事で動いてるのか?」
「…まぁ、そうですねその件に動いてる人間は私達だけじゃないんで…何とも言えませんけど、あまり首を突っ込まない事をお勧めしますよ…特に何の力もない人間は喰われるだけだ」
その言葉に広田がガタッと立ち上がった。
「く、喰われるって今までの失踪者は喰われたって事か?」
「あぁ、すみません表現が悪いですね、生きていますよ恐らくは。
ただ精神は喰われている可能性が高いんで、良くて廃人、悪くて植物人間でしょうかね?」
その言葉にドサッと長椅子へ体を戻すと、どうにかならないのか?と、村雲に問い掛けたが返事は貰えずに二人は事務所を後にした。
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