7/8
前へ
/145ページ
次へ
お待たせしました。 と、戻って来た二人が長椅子へと座ると、神成が背筋を伸ばす。 「改めて…言って置きますが、一花ちゃんは澪時の」 「嫁だろ?」 広田のその言葉に、そして話をブチ切られた事にポカンとする柊司と村雲。 それに気付いて苦笑いを零す神成がトントンと肘で広田を突いた。 「広田さん、流石に人の話てる最中は黙りましょう」 「あぁ、すまん」 「嫁とは…どうしてそう思いましたか?」 案外その話に乗って来たのは、村雲だった。 「アイツの目だよ」 「目?ですか…」 「ありゃ、骨抜きだろ?」 「…そうなんですか?」 「オレの感が言ってる、澪時は特別な感情をあの子に持ってるような…気がするんだが」 「…気のせいで納めないと、一花さんに殴られますよ?」 クスクスと笑った神成が告げれば、そうか?とキョトンとしている広田に、村雲がコホンと一つ咳を落とした。 「あの二人は恋愛関係にはないですよ…」 「へぇ、まぁ俺は感だからな、それが正しくなるかは時間が教えてくれるだろうよ…それより、あの子を人攫いの様にあそこへ連れてったのは俺だ、澪時がしばらく帰って来ないって言うから、彼女が現場を見れば何か手がかりが得られるかと思ってな…申し訳なかった」 大きな男が頭を下げるとどうしてこんなに…クマに見えるのか。 「ええ、澪時には伝えますので、怒られる覚悟はして置いた方が良いですね。彼女は嫁では無くても、澪時の特別な助手なんで」 「あぁ、覚悟しておくよ。 それより村雲さんよ、この事務所で動いてるって事で良いのか?」 その問い掛けに、所長はズズッとお茶を啜りながら、何がですか?と返した。 「あの神隠しは、怪異の仕業って事で動いてるのか?」 「…まぁ、そうですねその件に動いてる人間は私達だけじゃないんで…何とも言えませんけど、あまり首を突っ込まない事をお勧めしますよ…特に何の力もない人間は喰われるだけだ」 その言葉に広田がガタッと立ち上がった。 「く、喰われるって今までの失踪者は喰われたって事か?」 「あぁ、すみません表現が悪いですね、生きていますよ恐らくは。 ただ精神は喰われている可能性が高いんで、良くて廃人、悪くて植物人間でしょうかね?」 その言葉にドサッと長椅子へ体を戻すと、どうにかならないのか?と、村雲に問い掛けたが返事は貰えずに二人は事務所を後にした。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加