『騎士』という居場所

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カット氏との決闘が終わった翌日から、俺は部屋に引きこもっていた。不登校ではなく学院側の指示である。 謹慎1週間と反省文の提出。それが学院側が覗きをやった俺に提示した今回の罰則だった。 スライとの決闘で終わったと思っていたが『勝った方が負けた方に何でも言うこと聞かせる』というあの約束は俺とスライが勝手に取り決めたことで学院側は何も容認していない。故に勝とうが負けようが罰はある、というのがアーキバさんの主張だった。 言われてみればそれもそうかという話だ。喧嘩に勝てば全てチャラになるなんて、そんな都合のいい話があるはずない。むしろこの程度の罰で済んで良かったと考えるべきだろう。 ……まあ、それでもモグロは納得していないようだったが。 罰則を受けたのは俺だけじゃない。ビビル、モグロの2人も謹慎していた。 その謹慎中の間、俺は考えていた。 ――コタロー様の騎士になります。 スライが言っていたあの言葉。俺の騎士になるとは、どういうことなのか。 どれほど考えてもわからない。そもそも騎士とは何をするひとなんだ? 真っ先にに思いつくのは王様や貴族のような偉い人に遣えていて、悪党に襲われた時に体を張って主人を守るいわばSPみたいなイメージだ。けれど俺にそんなものがいても襲われることがまずないだろうから正直手に余る。 あの日は適当に頷いて帰したけど、スライのヤツ、頭を冷やしただろうか。あれはきっと頭がのぼせ上がっていて考えなしに言った発言だろう。もしかしたら今頃、昨夜の自分の発言に後悔しているかもしれない。 だとしたら安心しなさい。お兄さんは間に受けていませんよ。ちゃーんと分かっているから。あれが妄言だと気づいているから。 謹慎が明けたその日、俺はいつもと同じ時間に目を覚ます。ベッドから起き上がり、すぐに学院に行く仕度を始める。 スライと会ったら、あいつは何を言ってくるだろう。生真面目そうなあいつのことだから『この前はおかしなことを口走ってしまい、すみませんでした』とでも言って謝ってくるだろうか。 もしそうだったらスライに気にしてないと言ってやろう。それでこの話は終わり。スライとの関わりも最後だ。
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