血塗れの守り手

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言うだけ言って、アネは保健室から出て行った。雰囲気だけでも相当苛立っていたのがわかる。 アネには最近の俺が調子に乗っているように見えていたのか。そんなつもりはなかったが気づかないうちにそういう態度になっていたのかな? しかし……嫌い、か。 元々好かれているとは思ってなかったしきっとそうなんだろうと思ってはいた。けれど直接言われると……うん。心が痛む。 こういう感じは久々だなぁ。 『あ……う……』 顔を上げるとシルフィードが困った顔をしていた。ドアの前で出て行ったアネと俺へ交互に見ている。 あの人、精霊を届けるって言っておいて置いていってどうするんだ。 「俺のことはいいから。先輩のところに行ってきな」 逃げることはきっとない。直感でそう思った。 シルフィードが保健室を出るのを見送ってから、俺は座っていた姿勢を解いて立ち上がる。 教室へ向かう俺の脚はいつもより少し重い気がした。 ――――――― 再びそれは起きた。 空に雲がかかったある日の夜のこと。街頭や近隣の建物から漏れる光で明るく照らされた繁華街を狐顔――というか狐そのものの見た目――の男が歩いていた。 男は仕事で使う手提げ鞄を両手で抱きかかえ、早い歩調で道を突き進む。 冷や汗が流れる。額だけでなく、背筋や脇など、全身から吹き出ていた。 (……付けられている) 男は後ろから迫る気配を感じていた。気のせいや考え過ぎなどではない。何者かが自分を狙い、後ろをついてきている確信を持っていた。 何故付けられているのか。誰が付けているのか。その目星はおおよそついていた。 (前はエルフのあいつ。その前はカラスのダンナだった。今度は俺の番かよ……ッ!) 最近街に現れる通り魔の話は男も知っていた。そのニュースを見て、聞いて、そして今日初めて狐顔の男は襲われた被害者たちと自分の間にある共通点があることを知った。
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