血塗れの守り手

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「それを証明できる方は?」 「……たぶん、いねぇかな。子供らは寝てたしシスターと顔を合わせたのも晩飯の時が最後だったよ」 「わかりました。ありがとうございます」 ペンを走らせるのを止めて、メモをポケットにしまう。 「今日の聴取は以上です。どつぞ、お帰りください」 ーーーーーーーー 聴取が終わり、教室に戻ろうと廊下を歩く俺。そしてスライとアネ。 会話はなく、静かな空気が俺たちを包み込む。 ――俺も警戒した方がいいのか。 廊下の窓ガラスを通して灰色の曇天を見ながら俺は考える。 例の通り魔……Iキラの件が大事になってきている。今のところ被害は街の中だけだが次もそうだとは限らない。次はこの学院……万が一だが、俺が襲われる可能性だってある。 早々に捕まればいいが、果たしてどうなるか…… 「Iキラと不審者。この両者が同一犯だと思いますか?」 続いていた沈黙を破ったのはスライだった。 彼女の視線は俺に向いている。だから俺はその問いに答えた。 「……違うんじゃないか。もし同一犯ならここに来た目的がわからない」 きっとそうだというような言い方をしたが、内心は絶対に違うと確信している。Iキラと不審者ーーレジェは無関係。そのことだけは確かだ。 「コタロー様も同じ考えでしたか。私もそう思っていました」 考え込むように片手を顎にかけてスライは言う。 「学院に現れた不審者は女子生徒の服を切り裂く変質者であっても誰一人殺めることはありませんでした。それに不審者は見つかることを全く恐れていない様子でしたがIキラは人目につくことを恐れている印象を受けます。不審者とIキラ。同じ通り魔でもそのあり方には大きな違いがあるように思いました」 「そうだな……」 「あのホークスという警ら隊の方は本気で不審者とIキラが繋がっていると考えているのでしょうか? 素人の我々でもここまでの考察ができたんです。本職の方であればその程度のことに気づくのではないですか?」 スライが言うように不審者とIキラを同一犯だと考えるには異なる点が多い。それにホークスが気づかないのも妙だと思う。他にもあの事情聴取は気になることがあった。 見方を変えてみたらどうだろう。 もしも。 もしもホークスが本当は不審者=Iキラだと思っていなかったとすればどうか。その上で学院に調査しに来たのだとしたら目的はなんだ?
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