血塗れの守り手

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「ただの口実だろ」 そう答えたのは静かに話を聞いていたアネだ。 「不審者がIキラと同一犯かも。そう言えば学院側は警ら隊の再調査に応じるしかない」 「再調査? 何のために?」 「……こんなこと考えたくねーけどよ。街で起きてる事件はこの学院と何かしら繋がってる。もしかしたら次に事件が起こるのはここかもしれねぇ。あるいは……」 そこで言葉を止めたアネ。続けて何を言おうとしたか、俺には何となくわかった。 あるいは別の繋がりがあるのかもしれない。例えばこの学院……もっと言えばさっき風紀委員会室に集めたあの中にIキラがいる、とか。 「調べてみる必要がありそうだな」 アナがボソッと、そんなことを言った。 何をかは聞くまでもない。それでも俺はあえて尋ねた。 「調べるって、何をする気ですか?」 「さっきの警ら隊がやってたことと同じだよ。生徒たちに聞き込みをしてIキラについて調べるんだ」 「先輩……。それは警ら隊の仕事です。先輩がすることではないと思います」 「ンなことはわかってる。だけどここの生徒が疑われてるんだ。何もしないわけにもいかない」 「そうだとしてもIキラの調査は違うでしょう。他にすべきことがあるはずです。例えば避難経路の確認とか、生徒の外出について先生たちと相談するとか」 「あーもう、わかったわかった。じゃあ調査はアーシひとりでやる。ハッシュブレードや他の委員会のメンバーはテメェのいう確認や相談をさせる。それでいいだろう?」 「何もわかってない……。俺が言ってるのはーー」 ――ガッ! それは一瞬だった。 アネが俺の胸ぐらを掴み、自分の方へ引き寄せた。 刺すような眼光が俺の瞳に向けられる。そして言葉に静かな怒りを乗せて、アネは言う。 「ごちゃごちゃ五月蝿いンだよ。前に言ったこと、もう忘れたか?」 「……っ」 「アーシに指図するンじゃねぇ。わかったな?」 わかった以外の返事は聞かない。何を言わなくてもアネの気迫が俺にそう訴えてくる。 俺がゆっくり首を縦に振ると、アネは俺を軽く押しながら、胸ぐらを掴んでいた手を離した。
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