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最初は数人しかいなかった子供が騒ぎを聞きつけて奥からひとり、またひとりと人数が増えていく。気が付けば玄関が子供で埋め尽くされていた。
な、中に入れない……。というか手や服を掴まれて1歩も前に進めないぞ!
どうやって進もうかと悩んでいると家の奥から声が放たれた。
「こらっ、お前たち! こんなに玄関に群がってちゃお客さんが入ってこれないだろっ! 散った散った!」
そんな声が聞こえた途端、子供たちが一斉に動いた。楽しそうに騒ぎながら、全員がわーっと家の奥へ引っ込んだ。
そして入れ替わりにシスターの格好をしたラブラドールレトリバーと、その後ろに隠れるように金髪の髪にトラ耳を付けた少女が現れた。
この孤児院の主であるシスターのリーバとトゥラだ。
「さあ、入っておくれ。奥でお茶を用意してるんだ」
「……どうぞ」
2人(2匹?)に導かれて奥へと進む。
――あれ? こんなもの前からあったっけ?
廊下を歩く途中、窓の1枚がガラスではなく板がはめ込まれていた。テープを使って応急処置をしていることから割れたのだとわかる。
遊びに夢中になった子供が割ったのか? などと思っているうちに食堂のスペースに案内された。
テーブルにはティーセットと茶菓子が用意されていた。椅子に腰かけるとリーバが目の前のテーブルにカップを置いて紅茶を淹れてくれた。
「良い茶葉が手に入ったんだ。飲んでおくれ」
「ありがとうございます」
「さっきはすまなかったねぇ。子供らがはしゃいじまって」
「いえ、全然。気にしてませんよ」
「そういってもらえると助かるよ。みんなアクニンさんが大好きでね。来るのをずっと待っておったんよ」
「そ、そうだったんですね……。あの、シスター」
「ん? どうしたんだいアクニンさん。紅茶が口に合わなかったかい?」
「いや。紅茶はとても美味しいのですが、その……アクニンさんという呼ぶ方はちょっと、ねっ? あだ名だとわかってはいるんですが、ほんのすこーし、複雑な気持ちになりますので」
「なるほどそういうことかい。すまなかったね。今後は気を付けるよ」
「そうしてもらうと助かります」
そういって俺はカップに入っていた紅茶を飲み干した。
「良い飲みっぷりだね。もう一杯いかがかな? アクトウさん」
「ブッ!! し、シスター?」
「ホッホ。冗談だよジョーダン」
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