血濡れの守り手②

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「アネ先輩は何を聞いたんでしょう?」 「さあな」 アネは犬の獣人だ。きっと聴覚が発達していて、俺やスライでは聞き取れない遠くの音が聞き取れるのだろう。 飛び出す直前のアネの顔。あれは只事ではないと訴えていた。一体何を聞いたんだ? 上を飛ぶアネを目で追いかけつつ、全速力で追いかける。しかし何もない空を直進するアネに路地をくねくねと曲がる俺たち追いつけるはずもない。すぐに見失ってしまった。 とりあえずアネが飛んでいった方向に向かうと、街中にある緑地公園に到着した。かなり大きな土地のようで公園の入り口からではどこまでが公園の敷地なのか把握できない。手前には学院のグラウンドと同じくらいの芝生のスペースがあって、その奥に森林が広がっていた。 「いやあああああああああっ!!」 ――っ! 今の悲鳴は!? 俺とスライは声のした方向へ走る。 緑地公園の脇のスペースに東屋があった。近づくとひとりの女性がいた。 女性は両腕で自分の体を抱き、小さくさせた体を震わせていた。何かあったのは見てわかる。 「すみません。どうされましたか?」 スライが声をかけると、女性はバッと顔を上げて後ろに下がった。。こちらを見る彼女の顔はとても怯えていてた。 「来ないで……。来ないでええええええええ!!」 「お、落ち着いてください」 気が動転している女性をスライが説得する。ほどなくして落ち着きを取り戻した女性に何があったのか尋ねると、つい先ほど何者かに襲われかけたという。 声を上げて抵抗していたら誰かが来てくれて、その何者かは逃げたそうだ。 「誰かというのは、アネ先輩でしょうか?」 「タイミングと向かった方向からしてその可能性が高いな」 アネが聞いたという声は恐らくこの女性の悲鳴だったのだろう。 ――これは不審者の仕業なのか。 嫌な予感が脳裏によぎる。 もしかしてこれもIキラの仕業か。でも、だとしたら変だ。 この人は何故襲われた? "襲われる理由はないはずだぞ"。
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