血濡れの守り手②

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――考えるよりも今は…… 「すみません。逃げた不審者はどこに行きましたか?」 聞くと女性は森林に向かって指をさした。 俺は屈ませていた体を起こす。 「こ、コタロー様。いかがされましたか?」 「……スライ。俺はアネ先輩を探す。スライは警ら隊に連絡して、隊員が来るまでこの人と一緒にいてくれ」 「待ってください! 何をお考えですか?」 「先輩を探す。たぶん不審者を捕まえようとしているはずだ」 「駄目です! ひとりでは危険です! せめて警ら隊の到着を待ってから――」 俺は走り出す。後ろからスライの大声が聞こえた。 きっと後で怒られるだろう。だけど今はアネを見つけさせてくれ。 あいつの無事な姿を見ないと胸騒ぎが止まりそうにないんだ。 ――ポツ、ポツ。 空から落ちてきた小さな水滴が息を切らす俺の頬につく。 雨が降ってきた……。これ以上視界が悪くなるのはまずいぞ。 森林ゾーンはこの悪天候もあって薄暗い。十数メートル先が見える程度だ。それなのに雨は段々と強くなっている。このまま本降りになれば視野はより狭くなる。 走るペース配分を間違えたと今更ながら後悔する。 自分の荒い息遣いと心臓の音がうるさくて周りの音が聞き取りにくい。おまけに雨が葉に当たる音も邪魔してくる! 視覚と聴覚はほとんど機能していない。それでも俺は草木を掻き分け森の奥に進む。 どこにいる。どこにいるんだ…… 何でもいい。どこかに手がかりが落ちてないか! ――ザクッ。 俺の胸から、"刃物の先端が突き出た"。 「は……?」 突然のことに思考が止まった。 今、何が起きた……? 頭上の枝葉が大きな音を立てて揺れた。それに気づいた次の瞬間には刃物が胸から出ていた。 視線を落とす。突き出た刃物根元が赤い液体で滲んでいる。それが自分の血であることは明白だ。 じわじわと痛みがはっきりしてきた。同時に手を膝が震え、全身から力が抜けていく。 そうか……。俺、刺されたのか……。
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