血濡れの守り手②

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後ろに誰かが立っている気配を感じる。胸の刃物がわずかに動いていた。俺を刺した何者かは刃物を握った状態で俺の後ろにいるらしい。 ゆっくりと振り返る。刺した犯人の顔が目に映る。 アネ・ゴソッチオ。 捜していた彼女がそこにいた。 彼女は―― 俺の後ろに立っていて、自分の武器である大鎌の先端を俺の背中に突き刺していた。 「……ふっ」 無意識に笑っていた。同時に背中から突き刺された鎌が引き抜かれる。 足の力が完全に抜ける。俺の体は重力に引っ張られ、地面に倒れた。 血が止まらない。体が冷えていくのを感じる。体が重く、思うように動けない。 そんな俺をアネは見下ろしていた。俺の返り血を浴びているというのに動揺がまるでない。一切の感情を感じさせない、完全な無表情で見下げていた。 視界が霞む。直に意識が落ちることを直感で理解する。 「先輩……。これはさすがに、やり過ぎじゃないです、か……?」 独り言と言える呟き。返事を期待しての言葉ではなかった。 しかしそんな俺の予想に反して、アネの口が動いた。 言葉が、返ってきた。 「――助け、て」 意識が保てたのはそこまで。 血だまりの中で、俺の視界は黒く染まった。 ―――――――― 本格的に雨が降ってきた。街を歩く者の中で今日雨が降ることを知っていて事前に準備していた者は持ち歩いていた傘を開く。そうでない者たちは近くの店で傘を買うか傘をささずに街中を駆け抜ける。 そんな中で少女は歩いていた。傘を持っていないので全身がずぶ濡れ。しかし歩く速度を変えようとはしない。 今の彼女を例えるなら、抜け殻と言える。 開いた瞳に気力はない。歩き方もフラフラとしていて危なっかしい。そんなものが学生服を着ているのだから行き交う者たちから見れば異質な存在に見えただろう。 雨に打たれていることに、少女は何も思わない。そんなことを気にする余裕もないくらい彼女の心は動揺していた。
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