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どだだだどだだだだだだだどだだだだだだだだだだだだだだだだだ
ベッド中を何かが叩きまくる、いや、殴りつける音が響き渡った。
叫びそうになったが、必死で喉を押さえ、声を潰した。その間も奇怪で激しい音は頭の上で鳴り続ける。
どどどどだどどどどどどどだだどどだだだだどどどどだだだどどど…
狂ったようにベッドを殴りつける音と、ベッドか抜け落ちて壊れるのではないかと思う程の、軋みと揺れと衝撃がいっぺんに絶えた。
室内に静寂が戻る。その静けさの中、またあの、ペタリ、ペタリという音が聞こえた。
ゆっくりと移動し、微弱な風と共にカーテンの向こうへ消え去る。
それでようやく、麻痺しかけていた意識が元に戻り、俺はナースコールのスイッチを押した。
程なく看護士が駆けつけ、部屋に入ってきた。カーテンを開け、区切られていた俺のベッドのエリアに入ってくる。
それと同時に悲鳴が上がった。
放心していたことと、安全が確信できなかったことでずっとベッドの下にいたが、悲鳴に動かされ、俺は慌ててその場から這い出た。
そして、悲鳴を上げた看護士の隣で固まった。
つい何十分か前まで俺が寝ていたベッドは、最後に見た時とはまるで違う状態になっていたのだ。
無数についた赤黒い跡は、大きさは様々たが、総てが人間の拳のような形をしていた。そして、実際に拳で殴り続けたかのように、
ベッドは下へ突き抜けそうな程ぼこぼこにへこんでいたのだ。
看護士の悲鳴を聞きつけたらしい人達が何人も部屋に入り込んでくる。つけられた電燈の下で誰もが息を飲む。それを朧に感じながら俺はベッドの脇にへたり込んだ。
* * *
明るくなるのを待って、俺は院長や担当医から事情説明を求められた。
昨日退院した隣の人に受けた忠告と、看護士からの場所移動のことを隠さず話すと、院長や担当医は揃って首を傾げた。
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