第1章

2/8
前へ
/8ページ
次へ
「それにしても、人間を殺戮しているというのによくコンビニが残っているな」 「馬鹿かぁ?馬鹿なのかぁ?コンビニが無くなったらどうやって夜中に食い物を手に入れるんだよ?…それにおれ達は無闇矢鱈と殺戮してた訳じゃないんだよ。何事も無かったかのように人間に擬態して生きていくのが目的だったのに、お前が(やったのは亜美ちゃんだけど)あの学校の連中を殺し始めるから、他の人間にバレて大事になっちまったんだぞ」 「そうなのか…。それは悪かった」 「記憶が無いっつってもお前…罪の意識をだなぁ、しっかり持ってだなぁ、生きんといかんよ」 「ああ…。そうだな…」  酒の仕業か、山田の口調が少し怪しい。  未成年が酒を飲んでも良いのか。それについて誤解の無いように説明しておくが、僕達は人間では無く化物であるのだから未成年云々は関係無いのだ。  だから、コンビニで買ったボリスウイスキーを二人で飲んでいる。そんな友情溢れる二人組なのだから誤解しないで頂きたい。  僕と山田は黒川達から逃げて、走りながら何処に行こうかと相談した。  そうして決まった行き先がコンビニ。そこで酒を飲み今後の指針を決めていくという化物ながら、かなり人間的な判断だと云える。  山田はこう言う。 「やっぱりよぉ、お前が二人にやっぱり人間に擬態して過ごそうとでも言えば円満に解決するんじゃねぇの?元々お前が始めた事だしよぉ。ケツは自分で拭けよなぁ」  山田の意見は最もである。記憶は無いが主犯はどうやら自分のようだから。それにしても人間に擬態して平穏に暮らす筈が何故殺戮に発展したのか。まずはそれを確かめるべきだ。原因があるのならば、それを解決すれば良いのだから。  コンビニ前の鉄柵に座りゆらゆら揺れている山田に言う。  「山田。どうして僕は…いや、化物である真の僕は殺戮を選んだのだろうか?」  「あ?そりゃお前…あれだよ、元は平穏な生活を望んでいたのに真の哀川になった途端それだろ?つまり、あれだよ、お前…人間である偽哀川に原因があったんじゃねぇの?」  僕自身が原因?ありえない事だが、しかし確かにそれは尤もな意見だ。僕の持つ健全なる精神には殺戮を催す要素も含まれているという事か。ありえない事だが。 
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加