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「…ありえない事だが、それについては今後考えるよ。つまり原因は不明という事にしておこうでは無いか、山田くん」
「え…?ああ…もうなんでもいいけどよ…眠い…」
山田は鉄柵から既に降りてアスファルトに転がり「太陽のエネルギーを感じる」などと言っている。まるで酔っ払いのようになっていた。まったくだらしの無い山田だ。
しかしまあ、山田の言う通り亜美ちゃんと黒川にその旨を話して、人間に擬態して(僕にとっては今迄通りなのだが)生きて行こうという事で良さそうだな。逃げる必要も無かったな…。山田を連れて戻ろう。
「山田。逃げるのは止めだ。黒川屋敷に行き、謝ろう。人間だろうが化物だろうが、間違えを起こしたら謝るのが当然だからな。…おい、山田?」
酔っ払いはアスファルトに吸い付くように眠っていた。
「山田。起きろ。起きて歩くのだ。山田!」
「…ぉれ…ぃいから…」
まったく…。なんて山田だ!こんなに弱いのなら酒など飲まなければ良いのに。
仕方ない…。一人で戻るか。…いや、でもどうだろう?僕が一人で戻った場合山田は大丈夫なのだろうか?このままでは他の化物に人間と間違えられて殺されてしまうのではないか?或いは化物という事を見破られて人間に殺されるのでは?
「この辺りは大丈夫」という範囲から飛び出している可能性もある。こんな山田でも僕の親友なのだから、放ってはおけないな…。せめてこいつが起きるまで、何処か隠れていられる場所があれば良いのだが。
辺りを見渡すと、というよりコンビニの隣に古びた細長いビルがあった。電気が付いて居ない為誰も居ないだろう。僕はアスファルトに吸い付く化物を引っ張りそのビルの前まで向かった。
ビルには扉が無く、階段が上へと続いているのみだった。それをぼんやりとした光が照らしていた。コンビニ前よりはいくらかマシだろう。そう思い、山田を引っ張り階段に足を掛けたその時だった。目の前に黒い物体が現れた。それは何やら光る物を僕に放った。
「う、わっ」
紙一重でそれを回避するとそれは言った。
「こ、この野郎っ!避けやがったな!化物めっ」
「ま、待ちたまえ。僕は人間だ」
「嘘を吐くな!嘘を!証拠はあるのかよ?化物め。そんな、なぁ、人間引きずっているやつの事を信じられるかよ?化物だろ?化物なんだろ?この野郎!」
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