第1章

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何も言わない桜井は、結局目を逸らして、無言だった。 変な桜井… 「じゃあ、私次だから…」 「おう…」 桜井のことだから、送る、と言ってくると思ったけど何もなく 手を振って、別れた。 一人、最寄りの駅を降りる。 「何、寂しいなんて思ってるんだろ」 思わず零れる独り言。 「加乃…」 いきなり呼ばれて、ビクッと体が震えた。 桜井?と思って振り返ってしまった自分がいる。 「お前デート?」 そう、からかってきたのは、奏多だった。いるはずなく、急に現れるからどもる。 「か、な…」 もしかして、見られた? 「……」 部活鞄を肩から下げる奏多は、部活帰りだろう。それ以上追求してくることなく、隣に並んだ。 なんか、いつも以上に気まずい気がする 「あ、あのね、奏多」 「遥希から聞いてるから知ってる」 「うん…そうなんだけど」 なんて、言ったら良いのかわからない。 私は、奏多に何を言ったら良いんだろ
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