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およそ事件とは無縁な自然に囲まれているキャンパスにサイレンが鳴り響いた。
救急車で拓也が運ばれた後、警察の現場検証が行われた。
警官に順番に話を聞かれる事になった。
「二人が第一発見者だったんですね」
「はい、部室にいつものように入ろうとしたらロックされていて拓也が中で倒れていたんです。慌てて先生を呼びに行きました」
葉山は務めて冷静に答えるようにしたが胸の鼓動は早鐘のように打ち鳴らしている。拓也の状態が心配だった。
「通常、スタジオは防音状態にするためロックがかかっているのは別段おかしくないわけですよね?」
「はい、誰か先に入って練習をするのはよくある事です。その場合は後から来たメンバーはガラスごしに合図をするなりして中のメンバーに中から開けてもらってました」
「ところが、拓也さんは倒れていて中から開けてもらうことが出来なかった。ということは拓也さんは1人で練習をしている時になんらかの要因で倒れていたということですね」
「そうなります。理由はわかりません」
「首に巻き付いていたものはなんですか?」
「あれはベースとアンプを結ぶシールドです。あれが無いとそもそも音が出ません」
「ではそのシールドをつないで練習をしている間に首にシールドが巻き付いてしまい苦しくなって倒れたということですかね?」
「まあ、そうですね」
「今までもそういうことはあるんですか?」
「いや、ありません。通常、ベースの下から繋ぐものですから。それが首に巻き付いていたとするとベースをブルンブルンと回転でもして演奏してたとかではない限りは絡みつかないとは思いますが」
「でも、葉山さんのバンドはロックバンドなんですよね?そういうパフォーマンスもあるのでは?」
「まあ・・」
可能性としてはゼロではないかもしれない。確かに今日の音合わせの曲はハードロックだった。拓也はバンド内でもムードメーカーのお調子者だった。1人で先に練習をしているという開放感がそうさせたのか。だとしたらあまりにも不憫な事故だ。
少し離れた場所の奈々の様子を伺った。仲の良かった奈々が一番のショックだろう。もしかしたら二人はこっそり付き合っていたのじゃないかと今でも思う。だとしたら恋人とバンド仲間を一度に失った事になる。奈々の悲しい顔を見たく無かった。
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