episode170 感染者たち

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画面越し唇を近づけて 顔を見合わせる兄たちを挑発する。 「あなたもご一緒にいかがですか?薫お兄様」 あろうことか小悪魔は 画面端に映り込む俺にまで 食指を伸ばし微笑んだ。 「言ったろ。俺は遠慮しておく」 関わるもんか。 金輪際あんな奴――。 俺はふいと顔をそむけて言った。 「それは残念。少し疲れたな。ベッドに行きますね」 「おい!」 「和樹!」 画面が反転し 誰の家なのか――。 一瞬だけ どこかの室内が映し出される。 「それじゃ――ごきげんよう皆さん」 和樹の後を追うように 動物の長い尻尾が画面を横切った。 それが最後。 電話はプツリと切れた。
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