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画面越し唇を近づけて
顔を見合わせる兄たちを挑発する。
「あなたもご一緒にいかがですか?薫お兄様」
あろうことか小悪魔は
画面端に映り込む俺にまで
食指を伸ばし微笑んだ。
「言ったろ。俺は遠慮しておく」
関わるもんか。
金輪際あんな奴――。
俺はふいと顔をそむけて言った。
「それは残念。少し疲れたな。ベッドに行きますね」
「おい!」
「和樹!」
画面が反転し
誰の家なのか――。
一瞬だけ
どこかの室内が映し出される。
「それじゃ――ごきげんよう皆さん」
和樹の後を追うように
動物の長い尻尾が画面を横切った。
それが最後。
電話はプツリと切れた。
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