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episode170 感染者たち
「感染病だって?」
聞こえてる。
征司が興味なさそうに新聞を開く音。
「間違いないわ。あれと過ごしたから。あれの病気は感染するのよ」
聞こえてる。
意地悪女王がチャリンと金のスプーンを鳴らすと
「よさないか。馬鹿げたこと――」
フェイクの夫がいつになく
苛立った調子で言い放つ。
「だって薫ったらずっとああじゃない。感染したとしか思えないわ」
だから
聞こえてるって――。
「皆様――お茶のお代わりはいかがでしょうか?」
不穏な空気を察してか
ようやく戻ってきた老執事が話に割り込んだ。
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