同好の士

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「最初ですから易しい所からいきましょう、コレです」 アオイは【唇】と書いて黒板に貼り付けた。 青組のタツコさんがさっと果敢に手を挙げた。 いかにも勝ち気な様子だ。 「ここはやっぱりこの【舌】で。唇を割って入りましょう」 「初めからなかなか大胆で素晴らしいです。だけど、もう一声」 アオイの言葉に応えて、赤組の道江さんが立ち上がった。 「【歯】で攻めます」 さすが優等生。 ほ~っと一同から声が上がる。 鶴吉さんは、歯のない口元をもぐもぐさせた。 「良い勝負になって来ましたよ。他にはいらっしゃいませんか」 「あのう」 もじもじと、大人しい赤組のちよさんが手を挙げたので、生徒さん達はビックリした。 「【趾】。この一文字であしゆびと読むんですよ。私の趾に口づけなさい」 「赤組に3000点ッ!」 アオイが問答無用に高得点をつけた。 何点満点なのかもわからないが、誰もがちよさんの隠された一面を垣間見た。
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