72人が本棚に入れています
本棚に追加
「母の日が近いこともありますが、憧れの花なんです。子どもの頃には大嫌いでしたけど」
うん、と言うように加川が軽く頷いた。
「母を早くに亡くしたんです」
どうして初対面の人にここまで話をしているのか、さくらにはよくわからない。
「他人の事情なんて知らずに、学校じゃお母さんの作文を書けとか顔を描けとかな」
加川が意地の悪い表情になる。
「もしかしたら加川さんも……?」
「いいや、ピンピンしてる。まあ、今はオレの母親じゃないけどな。オレが十歳の頃、家族捨てて他の男んとこに走った」
さくらは言葉を探したが見つからない。
「そんな顔しなくていいよ。昔は恨んだけど、仲が悪い訳じゃない」
最初のコメントを投稿しよう!