72人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
「……困ったわねえ、寒気がする」
春雪先生はひとり呟いた。
とてもそうは見えないとはいえ、春雪先生は八十歳近い。
最近は近所の公民館でのお習字の指導が春雪先生の仕事だけれど、ちょっと動けそうにない。
春雪先生は、代わりを頼める教え子を頭に浮かべてみた。
実力がある子はこだわりが強くて人に教えるのに向かない。
人柄が善ければ押しが足りない。
どちらも備えている子は当然のように自分の仕事で忙しい。
一人ギリギリ頼めそうな子がいるけれど、ウンと言うだろうか。
春雪先生は電話を手にした。
最初のコメントを投稿しよう!