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「あ、アオイさん?」
「え、春雪先生?ご無沙汰してます。お元気ですか?」
「それがお元気じゃなくてねえ、今日二時間だけ力を貸してくれないかしら」
教え子の中ではアオイは実力だけなら1、2を争うし、資格も持っている。
恐らく時間もある。
本来何の問題もなく彼に頼めるはずなのだが、困った事に大層変わった子だ。
「何があったんです?」
「いえ、大したことじゃないんだけど風邪をひいてしまったの。今日だけ公民館の先生を任せられるかしら」
「おれ、教えるの苦手なの知ってますよね。いくら春雪先生の頼みでもちょっと……」
その答えは予想していた。
春雪先生はたたみかけた。
「任せられるのはアオイさんしかいないのよ。今日は課題を決めていないから自由にやってちょうだい。何と言っても……」
「何と言っても?」
「生徒さんは皆さん七十歳以上です」
「春雪先生、その話お受けします」
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