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「ということは、赤組青組同点ですね。次で決まりますよ。お題は【踝】です。くるぶし、これほど愛らしい響きは他にはありません」
「兄さん、わしらより枯れてるじゃねぇか。人間、興味が下にいくほど年寄りだって言うからね。わしはココがイチオシ」
作造さんは【胛】の字を掲げて見せた。
「かいがらぼね。肩甲骨のことさね。白い背中のあの特徴的な骨が鎖骨という一点でだけ繋がっているなんて、誰が思うかい?」
生徒さん達は感心した。
どうやら助平なだけの作造さんではない。
アオイが、今回は文句なしに作造さんに軍配を上げようとすると、音もなく鶴吉さんが立ち上がった。
「鶴吉さんが動いたっ!?」
もはや置物のような鶴吉さんだったので、全員が自分の目を疑った。
鶴吉さんはさらさらと【膕】の文字を書いた。
「誰か読めますかな」
生徒さんだけでなく、アオイも知らない文字だった。
「ひかがみと言いましてな。膝の後ろのあのくぼんだ所ですな。立っても座っても佳いものですな」
自然体。
鶴吉さんが神々しく輝いて見える。
「鶴吉さんに5000点」
誰からも文句は出なかった。
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