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「ごめんなさい」
ごめんなさい。
そのたった六文字の言葉が僕の心を粉々に砕いた。
思考が停止し、頭が真っ白になる。目の前の光景が現実であると、耳から入って来た言葉は紛れもない真実であるという認識が追い付かない。
夕焼けが長い影を作る渡り廊下で彼女が立ち去った後も僕は一人棒立ちだった。
――フラれた。
数秒かけようやくその答えに至る。
ここまで落ち度は無かった筈だ。
高校入学し、席が近かったのもあり、何回かは二人で遊びにも行った。好感度は十分あった筈だ。なのに……ッ
「……もうヤだ、死にたい……」
出来もしない事を一人呟く。
明日からどんな顔をして登校すれば良いのだ、友人にはなんて報告しよう、大見得切っちゃったからな、今更「フラれた」なんて言えやしない。まさか他に喋ってないだろうな、だとしたら明日から地獄だ。生き地獄だ、公開処刑だ。
「うぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!」
色んな考えが頭の中を駆け回り収集がつかなくなる。取り敢えず大声を挙げ発散を試みたが周囲から奇妙な物を見るような視線を向けられただけで得た物は無い。
帰ろう。
いつまでもこうしてはいられない。明日も、明後日も僕の事などお構いなしに時は流れる。学校に行かなくてはならない。
あぁ、叶う事なら数十分前……いや、五分でいいから時が戻ってはくれないだろうか。そうすればその時間の自分をぶん殴ってでも告白だなんて無謀な事辞めさせるのに。
時間は無慈悲に流れる。
これが卒業式とかだったら二度と会う事は無い相手に告白、と良い思い出へとなるだろう。
しかし今は高校一年生の六月。
そう、僕の高校生活というものは『これがすべての始まりだった』
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