22人が本棚に入れています
本棚に追加
…実を言うと他にも理由があったが、今はそのことは話さないでおいた。クロウはその間黙って聞いていた。
「…それで、仕事が欲しいんだ」
「なるほどな。確かにここで金稼ぐのは簡単だ」
「どういうことだ?」
「わからないか?ここは何でもアリの街だ。アンタがさっき見事に引っかかった連中だって、ここじゃお咎めなし。それこそ強盗や密売、淫売、殺しだって立派な職業だ」
「僕はそんなことがしたいんしゃない!」
思わず立ち上がったロベルトを、クロウは静かに手で制す。
「わぁってるよ。そう熱くならんでくれ。よし、わかった。アンタを雇ってやる」
あまりなクロウがさらっと言ったので、危うく聞き逃すところだった。
「ほ、本当に?」
「ああ、雑用係でも良けりゃな」
「…ありがとう、僕を信じてくれて」
礼を言うと、クロウは少し目を見張った
後、笑いをこらえるように言った。
「アンタは俺を信用したか?」
「ああ、信じる」
「根拠は?」
「え、根拠?」
「俺を信じた根拠だよ」
「あー…助けてくれ…はしなかったけど、手当てをしてくれたし。なんというか、信じるに足ると…いや、違うな。直感的にそう思ったんだ」
それに、と付け加える。
最初のコメントを投稿しよう!