22人が本棚に入れています
本棚に追加
外は雪が積もっていた。
今は止んでいるが、昨日は一晩中降ったようだ。
ロベルトは白い息を吐き出した。サバーブより寒さが厳しい。母手製の青いマフラーを巻きながら、離れてまだ三日と経たない故郷を思った。ほとんど中身のなくなった鞄を手に、クロウの背中を追って歩く。
「どこに行くんだ?」
「ついくりゃわかる」
クロウはロベルトを軽くあしらいながら、早足で街並みを過ぎていく。その間に何人かと挨拶を交わしていた。ヤバそうな男から若い女、老人まで…なかなかに顔が広そうだ。
「君はこの街に詳しいんだよね?出身者?」
「さぁね」
「年はいくつ?あまり僕と変わらないように見えるけど」
「ご想像にお任せする」
「家族とか親戚は?」
「秘密主義なもんで」
「本当の名前はなんていうんだ?」
「黙秘権というものがあってだな」
「何の仕事をしているんだ?」
「そのうちわかる」
「…君はそればかりだな」
「アンタは質問ばっかりだ。着いたぞ」
たどり着いたのはこれまた寂れた酒場だった。
昼間の飯時だかどうも活気に欠ける。
「おうクロウ。しばらくぶりだな。ここ数日どうしてた?」
「よぉフランク。ちょっと仕事でな」
フランク、と呼ばれた店の店主らしい人間は、年は50過ぎの恰幅の良い初老の男だった。禿げた頭を撫でながら、白んだ髭の下に人の良さそうな笑みが浮かべている。
最初のコメントを投稿しよう!