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とたん笑顔になったロベルトを、クロウはあきれたように見た。
「…アンタ、案外図々しいな」
「それ、フランクにも言われた」
何故この場所にここまで固執するのか自分でもわからなかった。何かに執着することの珍しいロベルトには、初めてに近い感覚だった。"ここじゃなきゃ嫌だ"と思った。"ここじゃなきゃダメだ"とさえ思った。自分がこんなにわがままだとは知らなかったーとロベルトは不思議な感慨にふけった。
「まぁタダでとは言わないぞ」
クロウの声にふと我にかえる。
「もちろん!今は金は無理だけど、他のことなら何でも…!」
「そうだなぁ…アンタは炊事洗濯…あとワルター達の餌やり担当だ」
「ワルター達?」
聞き馴染みのない名前に、ロベルトの頭にハテナが浮かぶ。
「カラスだよ」
ああ、と納得する。
「でも、これじゃあまるで僕、家政婦みたいだな」
「そりゃな。最初からそのつもりでアンタを雇ったんだ」
「そうなの?」
「ああ。だから宿代は給料から引いとくよ」
そう言って片目をつぶって見せたクロウに、ひょっとしてまた騙されたのかもしれない、と思うロベルトだった。
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