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この家は存外広いらしい。中を見回ってロベルトが抱いたのはそんな感想だった。前通された居間は物が少なくそれでいて狭い印象があったのだが、トイレにキッチン、小さいが風呂もある。失礼な話かもしれないが、正直驚いた。
「そんなにうちが珍しいか?」
クロウがマグカップを片手に近づいてきた。カップの中身はホットミルクのようだ。自分がおいしいと言ったのを覚えてくれていたのかもしれないと思うと、嬉しくなった。
「僕やっぱりここ、好きだな」
「電気はねぇが?」
「このランプとかろうそくの灯りが、なんだろう、すごく安心する」
クロウはふぅんと相槌をうって、椅子に座った。
「アンタも座ってくれ。聞きたいことがある」
そう言ってソファを顎でさした。ロベルトはそれに従う。
「何?僕に聞きたいことって?」
クロウが自分などに聞くことなど何もない気がする。
「アンタがここに来た理由」
ミルクをすすりながら出された返答に、少し拍子抜けした。
「それなら前話したじゃないか。それともまだ疑ってるの?父の友人に紹介されて…」
「それだけか?知り合いから聞いた不確かな噂話のみを頼りに、悪名高いダストにわざわざ?リスクが大きすぎる。いくらヌケサクなアンタでもそんな無謀はするまい?」
さらりとけなされたことにロベルトは引っかかったが、クロウの推測は当たっている。確かにそれだけならこの街には来ていなかっただろう。
「…別に隠してたわけじゃないんだけど」
気まずそうにクロウを見やると、続けて?と言うように小首を傾げた。
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