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ロベルトが目を覚ました頃にはもう辺りは真っ暗だった。
「…いっ」
起き上がろうとすると体が痛みを訴える。
「…なんてこった」
その痛みが自分がどういう目に遭ったのか理解した。
どのくらいの間気を失っていたのだろう。もうあの男達も女もいない。傍らには荒らされたカバンと空の財布、そして青いマフラーだけが残されていた。降ってきた雨が頬を打つ。
「いったい僕が何をしたっていうんだ…」
「何もしなかったのがアンタの敗因じゃあないか?」
うっかり漏らした独り言に、返答があったことに驚き辺りを見回す。するとバサッバサッと羽音がし、黒い羽が落ちてきた。塀の上に鴉が一羽とまっている。
「だ、誰だ!?」
「まぁそう警戒しなさんな。俺は無害だ」
朗々とした声を響かせ、暗闇から一人の男が現れた。
全身を黒いコートに包み、下手すれば闇にまぎれてしまいそうな出で立ち。顔も長い前髪で隠れていて、灯りのない今は全く窺い知ることができない。
「あーあ、酷くやられたなこりゃ。骨はイッってないか?」
「あの、あなたはいったい…」
「にしてもあんな古典的な手口に引っかかる奴がまだいるとはなー。このダストシティじゃきっとアンタだけだ」
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