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「あの、あなたの名前は、…!?」
差し出された手をグイッと引かれ、ソファに倒された。首に男の手がかかる。
「なっ、…っ…んぐっ」
覆いかぶさって見下ろしてくる男の顔を、始めて見ることができた。
漆黒の髪は肩ほどまで伸びている。同じく漆黒の瞳は切れ長で、白い肌と相まって男の顔が端正なものであることを伝える。こんな状況でなければ見惚れるほどだ、などとぼんやりしてくる頭で思った。
「今の話は本当だろうな?それとも新手の刺客か?」
ギリッと男の手に力がこもる。
「がっ…ほん、とうだ…っ」
「……」
しばし見つめあった後、すっと男の手が離れた。一気に吸い込んだ空気に肺が圧迫される。
「ゲホッガホッガハッ…はぁ…はぁ」
「…疑って悪かった。傷の手当てしてやるよ」
乱れた髪をかきあげながら、男は言った。
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