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傷にしみるが、ホットミルクの甘さが心地よい。
手当てを受けたところもそうたいした傷ではないということで安心した。
「ロベルト、だったか。さっきはすまなかった」
黒いコートを脱いで髪を一つにまとめ、謝罪する男は先ほどとは少し印象が異なった。
「いや、いいよ。こんな所に住んでたら、そうもなる」
それより、と話を切り出す。
「君は誰?」
「俺はクロウ。この辺じゃ皆そう呼ぶ」
「クロウ…それって本名?」
「いいや、通り名だ。鴉使いと言われるうちに、誰かがそう呼び始めたんさ」
「本当の名前は?」
「ここじゃ、あって無いようなものだよロベルト君」
男ークロウはそう曖昧に返した。
「で、仕事を探してるって話だったな」
「雇ってくれるのか?」
「そう早まるなよ。まだ決めたワケじゃない」
「…僕がこの街に来た理由、聞かないのか?」
「知人に俺を紹介されたんだろう?さっき聞いたよ。それともやっぱりあれは嘘か?」
「嘘じゃない!」
訝しげに形の良い眉をしかめたクロウに、焦って否定する。また殺されかけてはたまらない。
「…そもそも仕事を探すことになった理由をだ」
そして父が亡くなったこと、金に困っていること、母を一人街に残して職を探しに来たことなどを話した。
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