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「桂月、朝ですよ。起きなさい」
母の声がした。
「え?」
ぱちっと目を開く。
カーテンを開ける音がした。
寝起きの瞳に眩い光が差し込み、激痛が疾走った。
「痛っ……!」
焼け付くような痛みはじりじりと眼球を蝕んでいく。
「桂月っ?」
悲鳴に、部屋を出ようとしていた桃香が桂月を振り返った。
顔を両手で覆い、ベッドの上でのたうち回っている。
「桂月。桂月? どうしたの?」
上を向かせやんわりと娘の両手を顔から外すと、涙が溢れている瞳をゆっくり開かせた。
短く息をのんだ桃香の様子を、異変と感じ取った桂月は今だ流れている涙を軽く拭い、痛みに耐えながら状況を尋ねる。
「桂月……」
名を呼ぶ以外声が出ない母。
一度、深く息を吸い込んで吐き出すと静かに彼女に告げた。
昨日まで、色素は薄くとも茶色だった桂月の瞳は、美しい真紅に染まっていたのだ。
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