第1章

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私、佐々木湖南(ささきコナミ)は来る場所を間違っていたかもしれない。 「簡単な接客とレジ打ちをするお仕事です」のバイトの見出しと、家から自転車で10分という近さから選んだバイトに後悔していた。 平賀製作販売所の店主であり、雇い主の平賀高良(ひらがタカラ)博士は天才なのかもしれないけど、頭のネジが一本外れているのではないだろうか? 顔はイケメンの27歳と問題は無かったが、求人広告の見出しに騙されたと思っている。 平賀さんは、数々の「実験作」と銘打った商品を並べているが、接客の相手が「簡単」ではない。 ある時は、黒づくめの服を着た人達だったり、何かの達人の風格を漂わす人だったりと、お客の層が「普通」ではない。 私もドキドキしながら相手をしている毎日です。 と、言っても毎日お客が来るワケではありません。 たまーにしか来ないし、急に来られるので店にいる間は緊張の連続です。 心の準備は、整ってませんからっ! ほとんどの日は店内を掃除したり、博士がくつろげるように雑用を繰り返しております。 博士はチョコレートが好きなんですよ。 楽と言えば楽な仕事なのですが、博士の製作した「物体」は何の役に立つかのは不明です。 重くはないのですが、使い方が分からないだけに扱いが難しいです。取手のような部分があったので持ってみたら「それはデリケートな部分だ!そこは持っちゃいかん!」と怒られたりします。 レジはあっても、ほとんど使う事がなく無用の長物に思えますが、店の中には電池のような商品もあるので使うのだろうと思いますが、レジ打ちはこれまでこの店ではした事がありません。 なんの為にあるのか謎です。 博士の口癖は「私は私であって、私ではないんだよ。分かるかね?湖南君!」と言われましても…困ります。 一体、何が言いたいのか分かりませんっ。 「実用実験だ!」と言って、私を使わないだけありがたい話です。 何かヤバイ事に関わってなければ良いのですが…
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