カルテ1

4/8
前へ
/10ページ
次へ
******* 「HEY!菊代。 今日、これから呑みに行って、そのあと刺激的にすごさないかい!」 現在、私が勤務している病院の(もちろん動物)の院長先生は、大学での私の師匠である。 私が卒業する少し前にに学校を辞め、独立開業した師匠のもとに私が転がりこんだわけ。 正直、獣医師の世界はなかなか厳しくて、成り手がいなければ、引き取り手もいないという二重苦の茨の道。 師匠からのお誘いは、就職難にあえぐ私には、まさに『渡りに船』なわけで、応募した全ての病院が空振りしたのを見届けてから、私は師匠の話を請けた。 給与もちゃんといただけるし、休みだってある。 勉強だって出来る。 なのに、ギリギリまで回答を保留した理由はたった一つ。 ものすごく女癖が悪いのだ。 軟派とか、そんなレベルではない。 昔に、イタリア人は出会う女性全てに声をかけると聞いたことがある。 師匠は、その上をいく。 出会ってもない女性を口説こうとするのだから。 まず、女性一人と知り合えば、その女友達や姉妹を聞きにいき、必死でアポをとりにいく。 おかげで、常に何股かけているのかわからない。 そんな師匠が、独身でけっこう可愛い(友達からは、よく言われる)私を放っておくわけがなく、在学中から何度もお誘いがあった(全て断ってるけど) 百パーセント日本人の師匠が、どこからそんなイタリア人顔負けの女好きになったのか、 なぜ、下手くそ英語をちょいちょい混ぜてくるのか、 私はそんなに興味はないが、知る機会があれば知りたいと思う。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加