第1章

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その日は、小雨が降っていた。 中学3年生の10月。季節は秋になり、風が冷たくなり始めた頃だった。 雨のせいか、特にその日は肌寒くて、上着のボタンをしっかり留めていたのを覚えている。 受験勉強の合間に、友達と映画やショッピングを楽しみ、帰る頃には夕日が沈む時間だった。 予報外れの雨で、あいにく傘を持っていなかった。 コンビニでビニール傘でも買って帰ろうかとも思ったけれど、それも面倒くさくて、家に電話して駅まで迎えに来てもらうように頼んだ。 お母さんは、夕飯の支度中だと言って渋っていたが、5つ上の姉が、迎えに来ると言ってくれて、わたしはホッとして迎えを待った。 それが、とんでもない悲劇を引き起こす事になるなんて、気付きもせずに、ただ、迎えが来るのを待ち続けた。 丁度その頃、1つの事故が起こっていた。 雨で視界が悪く、ハンドル操作を誤ったドライバーが、高校生カップルと接触事故を起こしていた。 わたしは、何も知らずに、寒さに震えながら、いつまで経っても迎えに来ない姉に、不満を持っていた。 そう、何も気付かずに。 わたしを迎えに来る途中で、姉が事故を起こした事を。 事故に遭った女子高生が、重体で病院に運ばれて、処置の甲斐なく死亡した事も。 これから、わたしの人生は長いトンネルに入ったように、闇に閉ざされる。 わたしの我儘が、自分の未来を閉ざし、大切な人を傷付け、愛する人を苦しませる事になるなど、考えてもいなかった。 雨の日の、交通事故。 これが全てのはじまりだったーー。
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