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「どうして電話に出なかったんだ」
昭仁は玄関のドアを開けながらも、うつ向いて立っているマリアを見下ろした。
「ごめんなさい…」
マリアはうつ向いたまま、両手を握り、弱々しく答えた。
「まぁ良い。ちょうど私も大事な話があったのだ。取り敢えず、入りなさい」
リビングで、ソファーに腰を下ろしたマリアは、昭仁が鞄を椅子に置いたり、ネクタイピンを外したりする様子を、ぼーっと眺めていた。
「しかし電話一本寄こさなかった君が急に『会いたい』と言ってくるとは、なにかきっかけがあったんじゃないのかね。
女は本当に分からない生き物だ」
昭仁は、ネクタイを緩めながら話した。
「よくお見通しね。そうよ。ちょっと…私も、大事な話があるの」
そう言ったマリアの声は、活気がなかった。
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