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マリアは何も言わなかった。
「言わないのなら、警察へ行く事とする」
「そんな!」
マリアは叫び、椅子から立ち上がった。だが、なぜかすぐに再び腰をおろした。
昭仁は立ったまま、外したネクタイを椅子に掛け、淡々と話し続ける。
「当然だろう。返してくれないのなら、君のした事は、窃盗だよ。れっきとした犯罪だ。
しかし、君には恐れ入ったよ。私が寝ている間に盗むとはね」
「警察へ行くのなら、私も、あなたとの関係を、世間にばらすわ」
マリアは低い声で、ゆっくりと言った。
昭仁は、カッターシャツのボタンを外している最中の両手の動きをピタリと止め、マリアの顔を見た。
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