「だるま」序章

2/6
前へ
/6ページ
次へ
……微かに聞こえる、猫の声。 ずきずきと痛む頭。 ……私、一体? 手を上げようとして動かないことに気が付いた。 手だけじゃない。 両手・両足。 なにかに縛られてるのかびくともしない。 鼻を刺す、濃い鉄の臭い。 次第にあたまがはっきりしてきて、 いままでのことを思い出した。 ……ああ、そうか。 私は――。   息子の異常性はなんとなく気が付いていた。 好きなもの――人でも動物でも虫でも――が 逃げようとすると途端に機嫌が悪くなる。 最初のうちはそれだけ気に入っているのだと、 あまり気にも留めてなかった。 そのうち、 その癇癪があまりに度が過ぎるようになり、 怖くなった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加