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けれど、
大きくなるにつれてそれも
少しずつ治まっていき、
幼さ故のものだったのだと思っていた。
――しかし。
落ち着いてきたと思った息子は、
いままでと違った狂気を孕んでいた。
……上手く云えない、底知れない怖さ。
そのうち、近所で猫の惨殺死体が発見された。
……きっと息子の仕業だ。
何故かそう、確信した。
息子は猫が大好きだから。
怖くて怖くて主人に何度も説明したが、
取り合って貰えない。
堪りかねた私は、
ネットで知り合った男に頼んで
逃亡を企てたのだけれど。
「母さん。
どうして僕から逃げようとするの?」
視界に現れた息子の首が、不思議そうに傾く。
「あ、あなたが嫌いなんじゃなくて、ね?
父さんより好きな人ができたの。
だから」
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