「だるま」序章

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「僕を捨てる事実には変わりないよね。 僕はこんなに母さんを愛してるのに、なんで?」 「わ、わかったから! 逃げたりしないから! だから、これ、ほどいて!」 手足をがたがたと動かしてみたが、 息子はただじっと見つめてる、だけ。 「でもきっと、 ほどいたから母さん、逃げるでしょう?」 この場にまるでそぐわない、 愛おしむかの様な表情でうっとりと、 息子の白い手が私の顔を撫でる。 「だから、ね。 逃げられないようにしてあげる。 ちょっと痛いと思うけど、我慢してね? 全部全部、母さんのためなんだから」 ……ノコギリを握った息子の、 形のいい唇が綺麗な三日月型になった――。 「転校生を紹介するー。 入れー」 教室に入ってきた男の子に思わず息を呑んだ。
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