高鳴り

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「からかってねぇけど」 「じゃあ……なんなんだよ…―― からかってるとしか思えないよ」 しゅん、と落ち込んだかのように水波は俯く。そんな水波の頭に手を置き、わしゃわしゃと頭を撫でてやれば、「な、なんだよっ」と水波は可愛らしく言うのだ。 「冗談でもなんでもねぇけど、責任って何取れば良いのか分かんねぇし、俺だって…なんでキスしたのか分かってねぇし」 「…………」 本当の事を話せば水波は大人しく黙り込み、俯いたままだった。 それなのに、水波は白井の着物を小さく掴みボソリと呟いた。 「…その返答は…ズルい…――」 とだけ言えば、なんとなくだが、キスしてやりたいとか思ってしまった。 そんな自分が無性に恥ずかしなって、動悸が早くなる。 返答がズルいもクソもあるかよ。 意味わかんね。 「ま、まあ、好きな奴とか居ねぇと思うけど…――」 そもそも好きな奴って聞かれたとき、水波が頭に浮かんでしまった。 ま、蒼井とかに水波が好きなんだろ?とか、水波自身にオレのことが好きなのか?なんて聞かれれば、そうもなるか。 「で、責任ってなに取れば良いの」 「そっ、その話は忘れろっ」 もしも俺が、本当に水波のことを好きなんだとしても、それは絶対に叶うことのない恋心だ。 身分とかの前に性別という壁を越えることは出来ないのだから。 こういうのをなんというんだっけか。 衆道とでも言うのだっけ。 男同士の同性愛者。 「……はぁ」 男が好きとか、マジありえねぇ。 「なぁ、白井。 たい焼き」 「んあ? あ、ああ、ほんと好きだな」 「ああっ」 たい焼きごときで嬉しそうな顔をする。 毎日毎日懲りもせず良く食べるなぁとも思うが、そんな水波の笑顔が見たいから、たい焼きを買ってきてやってるのかもしれないと思うと、やはり胸が熱くなる。 そして気付いたのだが、胸が苦しくなったり熱くなるときは、水波が関わっている時なのだと気づいた。
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